院長コラム
講演報告:「日本循環器学会および日本高血圧学会ガイドライン2025で読み解く、心不全ステージと高血圧

先日、
「日本循環器学会および日本高血圧学会ガイドライン2025で読み解く、心不全ステージと高血圧管理について」
という演題名で講演を行う機会をいただきました。
今回の講演では、近年改訂された日本循環器学会および日本高血圧学会ガイドライン2025の内容をもとに、
心不全の発症・進行を防ぐために高血圧治療がいかに重要であるか、そして最新の心不全治療薬の役割について解説しました。
高血圧は心不全の最大のリスク因子の一つです
心不全は突然発症する病気ではなく、
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などのリスク因子が長年にわたり心臓に負担をかけることで、徐々に進行していきます。
特に高血圧は心不全の最も重要なリスク因子の一つであり、
血圧が高い状態が続くことで心臓は常に強い力で血液を送り出さなければならず、
その結果、心筋肥大や心機能低下を引き起こします。
ガイドライン2025では、
心不全の「ステージA・B」=まだ症状が出ていない段階からの血圧管理の重要性が、より明確に示されています。
心不全治療薬としてのARNIとSGLT-2阻害薬
講演では、心不全治療の中心となりつつある
ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
SGLT-2阻害薬
についても解説しました。
- ARNIは、心臓に悪影響を及ぼす神経体液性因子を抑制しながら、心臓を守るホルモンを増やすことで、心不全の進行や再入院を抑制します。
- SGLT-2阻害薬は、もともと糖尿病治療薬として開発されましたが、現在では糖尿病の有無にかかわらず心不全や腎不全の予後を改善する薬として位置づけられています。利尿作用や心臓・腎臓保護作用など、複数のメカニズムによる予後改善効果を持つことが特徴です。
これらの薬剤は、症状が出てから使う薬ではなく、早期から心臓を守る治療として重要な役割を担っています。
日常診療において大切にしていること
今回の講演を通じて改めて感じたのは、
心不全は「予防」と「早期介入」が何よりも大切な疾患であるということです。
当クリニックでは、
- 血圧管理を中心とした生活習慣の改善
- ガイドラインに基づいた適切な薬物治療
- 患者さん一人ひとりの背景に合わせたきめ細かな診療
を大切にし、将来の心不全発症や進行を防ぐことを目標としています。
今後も最新の医学的知見を日常診療に取り入れ、
地域の皆さまの健康維持に貢献してまいります。
血圧や心臓のことで気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。