院長コラム
高血圧および心不全治療における「ARNI」の適正使用と、高血圧管理の重要性について
昨日「ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)」のガイドラインに沿った適正使用をテーマに、医療従事者向けの講演を行いました。
ARNIは、**慢性心不全(特に左室駆出率≦40%のHFrEF)**に対する治療薬として、3月に公表された日本循環器学会(JCS)のみならず、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)をはじめとする国際ガイドラインでも第一選択薬として推奨されている新しいタイプの心不全治療薬です。従来のACE阻害薬やARBと比較して、死亡率および心不全による再入院率の有意な低下が報告されています。
ARNIは、アンジオテンシンII受容体拮抗作用(ARB)と、ナトリウム利尿ペプチド分解酵素であるネプリライシンの阻害作用を組み合わせたもので、心臓や血管にかかるストレスを軽減し、心機能を改善する効果があります。
さらに、心不全の予防や進行抑制には、高血圧の厳格な管理が不可欠です。最近の高血圧治療ガイドラインでは、心血管病の予防のため、一般成人の血圧目標は130/80 mmHg未満が推奨されています。特に心血管リスクの高い方(心不全ステージA=心不全リスク)や、すでに軽度の心機能障害がある方(心不全ステージB=前心不全)には、より積極的な血圧コントロールが重要です。
当クリニックでは、ARNIをはじめとする最新の治療戦略を取り入れ、個々の患者さんのリスクに応じたきめ細かな高血圧・心不全管理を行っています。
「血圧管理は心不全予防の第一歩です。」
正しい知識と早めの対応が、将来の健康につながります。
ご自身の血圧値や治療方針について不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。