院長コラム
講演報告:「VTE対策はスタッフを守る医療安全:院内肺塞栓症ゼロへの挑戦」

このたび
「VTE対策はスタッフを守る医療安全:院内肺塞栓症ゼロへの挑戦」
というタイトルで、山梨県立中央病院や大学病院などの先生方を対象として、講演を行いました。
VTE(静脈血栓塞栓症)とは?
VTEとは、
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 肺血栓塞栓症(PE)
をまとめた総称です。
足の静脈にできた血栓が肺に飛ぶと、呼吸困難や胸痛を引き起こし、重症化すると命に関わることもあります。
しかし、早期発見と適切な治療により十分対応できる疾患です。
周術期だけではない ― 内科・がん患者さんのリスク
2024年に執筆した以下の私たちの論文では、いくつかの重要な点が明らかになりました。
これまでVTEは「手術後の合併症」という印象が強くありましたが、
- 内科系疾患の患者さん
- 特にがん患者さん
での発症が少なくないにもかかわらず、
必ずしも十分な診療体制が整っていない現状があることが分かりました。
この論文は、
2025年改訂 日本循環器学会
「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」
に参考文献として採用されています。
つまり、VTEは特定の状況だけでなく、
日常診療の中で常に意識すべき疾患であるということが、ガイドラインでも示されたのです。
外来クリニックで重要なこと
当院は入院施設を持たない外来クリニックです。
そのため、私たちに求められる役割は
- リスクを見逃さないこと
- 早期に疑うこと
- 適切な診断をおこなうこと
- 特に外科手術や人工心肺を要する重症例を的確に診断し、迅速に専門医療機関へつなぐこと
です。
例えば、
- 片足の急な腫れや痛み
- 原因のはっきりしない息切れ
- 胸の痛みや動悸
といった症状がある場合には、VTEの可能性も考える必要があります。
「少し様子を見よう」が命に関わることもあります。
医療安全としてのVTE対策
VTEは突然発症することがあります。
だからこそ重要なのは、
疑う力と、見逃さない意識です。
講演では、
- 内科・がん診療におけるVTEの実態
- ガイドラインの最新知見
- 診療体制構築のポイント
についてお話ししました。
患者さんへ
長時間の安静、がん治療中、脱水、感染症などは血栓のリスクを高めることがあります。
「足が急に腫れた」
「息苦しさが続く」
など、気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。
VTEは、早く気づけばきちんと治療できる病気です。
今後も最新のエビデンスに基づき、
安全で質の高い診療を提供してまいります。