院長コラム
COPDは「肺の病気」だけではない?— 循環器疾患との深い関係

COPDは「肺の病気」だけではない?—循環器疾患との深い関係について
皆さんは「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という病気をご存じでしょうか?
「タバコが原因で肺が悪くなる病気」と思われがちですが、実はそれだけではありません。COPDは心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクを高めることが、近年の研究で明らかになっています。
昨日は、このテーマについて医療関係者向けの講演を行い、最新の研究データも交えながら、COPDの前段階の病態も含め、詳しく解説しました。
今日は、その内容を皆さんにも分かりやすくお伝えしたいと思います。
COPDと循環器疾患の関係とは?
COPDは、主にタバコの煙などの有害物質を長年吸い込むことで肺に炎症が起こり、気道が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。しかし、肺だけでなく全身に影響を及ぼすことが分かっています。
COPDの患者さんでは、血管の炎症や動脈硬化が進みやすく、結果として心筋梗塞・狭心症・脳卒中・心不全といった重大な循環器疾患を引き起こすリスクが高くなります。
特に、COPDの方は心筋梗塞のリスクが1.5~2倍、脳卒中のリスクも高まることが最新の研究で報告されています。
なぜCOPDが循環器疾患を引き起こすのか?
そのメカニズムは主に以下の3つです。
1. 慢性炎症
COPDでは肺の炎症が続きますが、この炎症が全身に波及し、血管にも悪影響を及ぼします。結果として、動脈硬化が進み、血栓(血の塊)ができやすくなります。
2. 酸素不足(低酸素状態)
肺の機能が低下すると、血液中の酸素が不足し、心臓に負担がかかります。そのため、心不全や不整脈のリスクが高まります。
3. 交感神経の過剰な活性化
COPDの患者さんでは、息苦しさによって交感神経が過剰に働き、血圧の上昇や心拍数の増加を引き起こします。これが、心筋梗塞や脳卒中の引き金になることがあります。
COPDを放置しないために大切なこと
COPDは進行すると日常生活に支障をきたし、循環器疾患のリスクも高まるため、早めの診断と治療が重要です。
✔ こんな症状がある方は要注意!
✅ 階段を上るとすぐに息切れする
✅ 慢性的な咳・痰が続いている
✅ 朝起きたときに呼吸が苦しい
✅ 風邪をひくと咳が長引く
COPDの診断は**簡単な呼吸の検査(スパイロメトリー)**で行えます。気になる症状がある方は、早めに受診しましょう。
まとめ:COPDと心臓・血管の健康を守るために
COPDは単なる「肺の病気」ではなく、全身の健康に関わる重大な疾患です。特に心血管系への影響を考えると、早期発見・早期治療が非常に重要です。
当クリニックでは、循環器疾患の予防、診断、治療のみならず、COPDの診断・治療、禁煙外来にも力を入れています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
皆さんの健康を守るために、最新の知見を活かした診療を提供してまいります。