院長コラム
講演報告:「かかりつけ医のための高血圧セミナー」

昨日、かかりつけ医のための高血圧セミナーという講演会にて、「高血圧ガイドラインに基づく高血圧管理の実践」というテーマで講演を行いました。
高血圧は非常に多くの方が抱えている病気ですが、我が国の本来治療すべき患者数に占める治療率は56%、適正血圧に管理できている方の割合はわずか27%と言われています(参考文献:日本高血圧学会、高血圧治療ガイドライン2025)。
しかも、管理不十分な高血圧は、脳卒中や心筋梗塞、心不全、腎臓病といった重大な疾患の大きな原因でもあります。
そのため、現在は「なんとなく下げる治療」ではなく、最新のガイドラインに基づいた、根拠のある管理が求められています。
今回の講演では、その実践方法についてお話ししました。
特にお話しした「ARNI」という新しい選択肢
今回の講演で特に力を入れてお話ししたのが「ARNI(アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)」という比較的新しいタイプのお薬です。
なぜARNIは効くのか?
ARNIは、2つの作用を併せ持つ薬です。
1つ目は、血管を収縮させるホルモン(アンジオテンシンⅡ)の働きを抑える作用。
2つ目は、体が本来持っている「血管を広げる・塩分を排出する」働きを強める作用です。
つまり、
- 血管を締めつける力を抑えながら
- 血管内水分量を減らす
という“二方向からのアプローチ”を行うのがARNIの特徴です。
その結果、より安定した降圧効果および除水効果が期待でき、心臓や腎臓への負担軽減にもつながると考えられており、我が国では高血圧および心不全に対する適応が認められている薬剤です。
ARNIの上手な使い方
講演では、「ただ新しい薬を使う」という話ではなく、
- どのような作用機序を持つ薬剤か
- どのような患者さんに向いているのか
- 心不全を合併している場合の考え方
- 腎機能低下症例への注意点
といった、実際の臨床現場での具体的な使い方についてもお話ししました。
薬は“強い・弱い”ではなく、その方に合っているかどうかが最も重要です。
ARNIも適切なタイミングと適切な患者さんに使うことで、より大きな効果を発揮します。
下園 弘達先生のご講演と仮想症例ディスカッション
私の講演の次のセッションでは、
六本松循環器内科クリニック 院長の 下園 弘達先生 がご講演されました。
その内容をもとに、仮想の患者さんを設定し、
- どの段階でどの薬剤を選択するか
- ARNIをどう位置づけるか
- 生活習慣指導をどう組み合わせるか
といった具体的な治療戦略について、参加された先生方とディスカッションを行いました。
特に印象的だったのは、同じガイドラインをもとにしていても、治療戦略にはさまざまな考え方があるということです。
参加された先生方の実際の臨床経験に基づく工夫や視点を伺うことができ、私自身にとっても大変勉強になる時間となりました。
高血圧治療は「未来を守る治療」
高血圧は症状がほとんどありません。
しかし、放置すれば確実に将来の病気につながります。
だからこそ、
- ガイドラインに基づいた管理
- 科学的根拠のある薬剤選択
- 患者さん一人ひとりに合わせた治療戦略
が重要になります。
今回の講演とディスカッションを通じて、改めて感じたのは、高血圧治療は日々進歩しており、より良い選択肢が増えているということです。
今後も最新の知見を取り入れながら、皆さまの健康を守る診療を続けていきたいと思います。
血圧が気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。